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海外ドラマが好きな人なら、必ず見たことあると言っても過言ではないドラマ『ブレイキング・バッド』。アメリカドラマ史上、最高傑作と言われているドラマです。
2008年~2013年まで放送され、シリーズ終了からかなり経過してもこれを超えるドラマは登場していないと言われるほど。どうしてここまで『ブレイキング・バッド』が崇められるのが、その理由を考察してみました!
『ブレイキング・バッド』のあらすじ
高校の化学教師ウォルター・ホワイトは肺癌であることが分かり、余命数年と宣告されます。妻のスカイラーは妊娠中で、息子のウォルター・ジュニアは脳性麻痺を患っています。
家のローンも残っており、決して楽な生活ではないホワイト一家。ウォルターは自分の死後も家族が困らないよう資産を残すため、化学の知識を活かしてメタンフェタミンを製造して売りさばくことを決意。元教え子のジェシー・ピンクマンに手ほどきを受け、裏の世界で麻薬王としてのし上がっていきます。
アメリカのドラマの概念を打ち破ったドラマ

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どうして『ブレイキング・バッド』がここまで評価されるのか、それは今までにないアメリカドラマだったから。アメリカのドラマの概念を打ち破ったドラマと言えるからでは?と筆者は考えます。
アメリカの根底にあるもの、それは「ハッピーエンド」と「ヒーロー好き」。アメリカ人はとにかくハッピーエンドとヒーローが大好きで、それはアメリカ映画とドラマにも顕著に表われています。
ハッピーエンド&ヒーロー好きがアメリカドラマの典型になってしまって、どうしてもワンパターンな印象というのが否めませんでした。『ブレイキング・バッド』はシリーズを通じてヒーローらしき人は出てこず、どちらかと言えば観ていて胸くそ悪くなるようなキャラクターばかり。
ハッピーエンドには程遠い結末…。作品としてのクオリティと俳優たちの素晴らしい演技はもちろん、今までなかったタイプのドラマにアメリカ人が熱狂したのではないでしょうか。
今までになかったバッド・エンディング

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『ブレイキング・バッド』は、アメリカのドラマに今までなかったようなバッド・エンディング。ハッピーエンドや救いのあるエンディングを当たり前のように受け入れていた視聴者は、『ブレイキング・バッド』の持つ救いようのない主人公のキャラクター像やストーリー展開に土肝を抜かれます。
そして最後はあり得ないバッド・エンディング…。今までこんなバッド・エンディングのアメリカドラマってあったでしょうか?かつて存在しなかったようなドラマだったらこそ、視聴者の記憶に強烈に残り大きなインパクトを与えました。
『ブレイキング・バッド』がアメリカのドラマの流れを変えたと言っても過言ではないほど、そのインパクトは大きかったと思います。だからこそ『ブレイキング・バッド』は、アメリカドラマ史上最高傑作と謳われているのではないでしょうか。
ドラマのカテゴリーに合てはらまないドラマ
それまでアメリカのドラマは大きく分けて、1話完結の刑事ドラマ、メディカルドラマ、青春ドラマ、シットコム、メロドラマ、といった感じでした。
今まではこのドラマはこのカテゴライズ、という風に簡単に当てはめることができたのに、『ブレイキング・バッド』は違いました。1話完結でもないし、クライムドラマで刑事が出てくるけれど、今までの刑事ドラマには当てはまらない…。
そんなカテゴライズするのがむずかしいタイプのドラマも、『ブレイキング・バッド』が初めてなのではなかったのかと感じます。いきなり1話目から50代のおっさんがブリーフ姿で砂漠を逃げ回るとか、今までのドラマではなかったですから!
主人公ウォルター・ホワイトの人間像

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ドラマをさらに面白くしているのが主人公のウォルターの人間像。ウォルターは一見とっても温厚そうな、どこにでもいる普通のおじさん。肺癌宣告され、家族のために資産を残すために麻薬ビジネスに足を踏み入れることになりますが…。
ウォルターって一見温厚そうだけど、実は既に悪い因子をしっかり持っている人間です。普通の人なら家族に資産を残すために、麻薬を作って売ろうとは考えないはず。
それに麻薬製造がばれないように、スカイラーに平気で嘘を付くウォルターを見ていると、結局この人ってこういう人間だったんだと思えてなりません。嘘つきは泥棒の始まり、と昔の人は上手いこといったものです。
今までは家族思いの高校教師という仮面をかぶっていたのが、麻薬ビジネスに手を染めたことでウォルターの本性がむき出しになっていきます。
家族のため、というのは言い訳

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家族に資産を残すために麻薬ビジネスに手を染めたというのが、ウォルターの言い分です。ドラマ内でも後に自分でも認めているけれど、結局それは自分のため。
ウォルターの根底にあるのは、大学時代の同級生エリオットと恋人のグレッチェンと一緒に共同で立ち上げた会社「グレイマター」のこと。自分が「グレイマター」を辞めた後に会社が大成功したのが、ウォルターの大きなしこりになっています。
自分が成功できなかったことが劣等感になり、エリオットとグレッチェンを恨むことがウォルターが麻薬ビジネスで成功する熱意になっています。最後にエリオットとグレッチェンを脅して家族に資産を渡すように命令することで、やっとウォルターは劣等感を克服するのです。
アメリカドラマ史上、最悪の主人公
ウォルターは自己肯定感が異常に低く、コンプレックスのかたまり。見ていてこんなに気分が悪くなるドラマの主人公は、ウォルターが初めてでした。裏社会でのし上がると同時に人間性をどんどん失い、平気で殺人を犯す…。
普通映画やドラマだと、登場人物に共感してうんうん、分かる分かるという気分になりたいもの。それがウォルターには全く共感できない!回を追うごとにどんどん嫌いになっていく主人公って、後にも先にもウォルターだけです。
特にジェシーの彼女のジェーンがドラッグのオーバードースで死にかけているところを目撃しながらも、彼女を助けず見殺しにするシーンはウォルターという人間性を見事に表しているように思います。
自分のことを守るためなら他人の命などお構いなし、まさに鬼畜の所業。どんなにウォルターが嫌いでもドラマを観続けてしまうのは、人間の持つ「怖いもの見たさ」をしっかり狙った作りになっているから。
ドラマではウォルターとジェシーが悪い奴のコンビとして登場するけれど、ジェシーは悪い方のいい方。情けがあって自分を犠牲にして他人を助けることができる、根はいい奴に描かれています。
ジェシーの存在がさらにウォルターの悪役としての存在を際立たせて、ますます視聴者をムカつかせてくれるというワケですね。
ウォルターとジェシーの関係
ときには父子のように、ときにはライバル、ときには敵同士、ウォルターとジェシーを巡る関係がいちじるしく変化するのも、このドラマの魅力のひとつ。
息子のウォルター・ジュニアより、他人のジェシーとのほうが見ていて強い絆を感じさせます。ジェシーは心のどこかでウォルターの化学者としての才能にほれ込み、尊敬心を抱いています。
ウォルターはジェシーに自分にはないものを感じ、お互いどこかで認め合っている関係。自分のことだけを考える利己的なウォルターが危険を犯してまでも、ドラマのラストでジェシーを救いにいくのも二人の絆のなせる技です。
魅力的な脇役

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『ブレイキング・バッド』はシリーズを通じて魅力的な脇役が多く登場します。妻のスカイラー、息子のウォルター・ジュニア、義理の妹のマリー、マリーの夫で麻薬捜査官のハンク、何でも屋のマイク、弁護士のソウル・グッドマン、麻薬ビジネスを仕切るガス。
ソウル・グッドマンを主役にしたスピンオフドラマ『ベター・コール・ソウル』が人気を博しているのも、キャラクターを深く掘り下げた登場人物を魅力的に描いているからに他なりません。
ピンクのクマのぬいぐるみ
シリーズを通じて登場する、目が取れたピンクのクマのぬいぐるみ。一体ストーリーとどう関係あるの?と見ていて不思議に思うはず。ウォルターが関係して引き起こしてしまう、最悪の事故と大きく関係していることが後から分かります。
こういったシリーズ全般に張り巡らされた伏線も見ごとで、ああ、これはこういうことだったのか!と種明かしが分かるのも『ブレイキング・バッド』の面白さのひとつです。
アルバカーキ
麻薬ビジネスの話なら、ほとんどの場合ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴなどの大都市が舞台です。それが『ブレイキング・バッド』の舞台はアルバカーキ。
いったいどこにあるの?というくらいマイナーな街ですが、それがまた『ブレイキング・バッド』を特別なドラマに仕上げています。
荒涼とした砂漠でキャンピングカーに乗って麻薬精製する、ウォルターとジェシーの姿が何ともシュール。乾いた空気感とくすんだ色合いの映像が、『ブレイキング・バッド』の雰囲気を盛り上げています。
『ブレイキング・バッド』のまとめ
自分なりの見解ですが、『ブレイキング・バッド』が最高傑作と言われる理由について考察しました。『ブレイキング・バッド』以前と以後もたくさんのクオリティの高いドラマがありますが、やはり『ブレイキング・バッド』は他のドラマとは一線を画す傑作です。一度観てもまた見返したくなる中毒性の高いドラマなので、まだ観ていない方は一見の価値ありですよ。