宮部みゆきによる同名ベストセラー小説「模倣犯」を、Netflix台湾がドラマ化。二転三転するストーリーに視聴者が翻弄される、良質のサスペンス・ドラマに仕上がっています。本作のキャストや見どころなどを、ネタバレなしで早速チェック!
『模倣犯』概要
配信日:2023年3月31日
ジャンル:クライム、ミステリー、サスペンス、ヒューマン・ドラマ
製作国:台湾
話数:全10話、1話約50~70分
日本語吹き替え:あり
『模倣犯』あらすじ
公園で女性の切断された右手が発見され、グォ検事が捜査に当たる。グォ検事は過去に似たような事件がなかったか調べるうち、ジャン・ユーピンが殺害された事件と類似性に気付く。
ジャン・ユーピンを殺害した犯人の供述は穴だらけで、グォ検事は犯人が誰かをかばっているか共犯がいたのではとにらむ。
ユーピンの友人で記者のルー・イェンジェンが、グォ検事に捜査協力する。若い女性が立て続けに行方不明になり、事件を追う関係者の家族も事件に巻き込まれてしまう。
仮面をかぶった連続殺人犯ノウがテレビ局に自ら連絡し、メディアと世論を煽り国を恐怖に陥れていく。
捜査を進めるうち有力な容疑者が浮上するが、グォ検事は犯人を追い詰めていく過程で過去のトラウマが蘇り、検事としての立場を忘れてしまう…。
『模倣犯』感想&評価
IMDb:7.0(10点中)
総合評価:★★★☆☆
ストーリー:★★★☆☆
エンタメ性:★★☆☆☆
感動:★☆☆☆☆
筆者は原作は読んでいないのですが、ドラマ版は原作から大きく内容が変更されているそうです。感想を一言で言うと、見応えはすごくありましたがいろいろな点が惜しかった…。
まず1話60分全10話という尺がものすごく長い!内容的に重くて暗い人間のダークサイドを炙り出すストーリーだったため、途中で観るのが辛くなってしまいました。
グォ検事が追う女性の連続殺人事件は、胸くそ悪くなるような描写の連続で、さすがにこれはちょっとキツイ…。筆者の個人的な問題ですが、台湾や中国の作品を観慣れていないせいもあり、名前が覚えにくくてものすごく混乱(笑)。
よく言えば事件ごとに丁寧に描いた構成ですが、悪く言えば多少間延びした印象を与えてしまいます。
それでも二転三転するストーリー構成や、張り巡らされた付線などミステリーとしてのおもしろさは抜群でした。ただすごく残念だったのが、演出のせいで犯人が途中で分かってしまったこと。
鈍くさい筆者はミステリーでは犯人が最後まで分からないことが多いのですが、演出の顔の表情やクローズアップのタイミング、ストーリー構成で、あ!コイツが犯人だ、と分かってしまい何だか拍子抜け。
怪しいと思わせておいてやっぱり違った…、という展開を期待したのですが、最後にどんでん返しもなくそのまま終了。
演出がもう少し工夫されていれば、犯人が最後まで分からない良質のサイコ・サスペンスだったのになと惜しい気がしてなりません。
後半はタイトルの『模倣犯』通り、殺人鬼ノウの模倣犯が乱立するという皮肉をメッセージ性を持って描いていて、締めとしてはよかったと思います。
台湾ドラマを観たのは初めてでしたが、主演のグォ検事を演じるウー・カンレンがカッコよかったです!個人的にはこれからもっとアジアのドラマを観てみようかな、というきっかけになったと思います。
『模倣犯』キャスト
グォ・シャオチ(ウー・カンレン)
女性連続殺人事件を手掛ける敏腕検事。子供の頃に事件に巻き込まれたトラウマを抱えている。
ルー・イェンジェン(キャミー・チャン)
グォ検事に協力する記者。友人のジャン・ユーピンが殺害された悲しい過去を持ち、女性の殺人事件を取り上げた特番製作を願っている。
リン・シャンヨン(トゥオ・ツォンファ)
グォ検事と共に事件を捜査する刑事。一人娘のユートンを大切に思っているが、関係は上手くいっていない。
フー・ユンホイ(アリス・クー)
グォ検事の元恋人の心理学者。グォ検事に連続殺人事件の犯人像について助言する。
フー・ジェンホー(シア・トンハン)
TBNテレビ局のカメラマンで、ユンホイの弟。顔に大きな火傷の痕があり、目立たない大人しい性格。
シェン・ジャウェン(フェンディ・ファン)
クラブ「キンク」の人気DJで通称ケビン。ジェンホーの友人。
チェン・ホーピン(ジャック・ヤオ)
TBNテレビ局の司会者。イェンジェンの同僚で、ヤーツーのポジションを狙っている。
ヤオ・ヤーツー(ルビー・リン)
TBNテレビ局の人気メインキャスター。仕事に厳しいが、イェンジェンの仕事ぶりに注目し目をかけている。
『模倣犯』見どころ・解説・考察
二転三転するストーリー
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本作はさまざまな事件が登場し、その一つ一つを丁寧に説明し関係者の心情をしっかり描いているのが特徴です。
張り巡らされた付線や登場人物同士の関連性など、蜘蛛の巣を張りつめたような相関図が出来上がるほどで、よく観ていないと多少混乱してしまうかもしれません。
しかも名前の響きが似ていて、誰が誰だったっけ?となってしまうため要注意。途中でここで犯人分かっちゃうの?という展開になるものの、その後二転三転するストーリーが続き、視聴者は完全に翻弄されてしまうはず。
マスコミを翻弄する殺人犯の正体は?
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女性連続殺人犯のノウは自らマスコミに接触し宣戦布告するなど、目立つのが大好きなスタンド・プレーヤーです。遺体遺棄も遺族の心を逆なでするような方法を好み、まるで被害者や遺族をあざ笑うようなサイコパス。
心理学者のユンホイは、犯人は目立ちたがり屋のナルシストであり自己顕示欲の強い人物だと、犯人像をプロファイリングします。
自己顕示欲が強いのは自己肯定感の低さの表れで、他人に認められたい、注目されたいといという欲求の手段が殺人となったとも言えます。
他人に認められたいノウが数多くの模倣犯を作り出すことになり、似たような「自分」が乱立しコピーされていく後半は、ノウにとって耐えがたい屈辱なのではないでしょうか。
登場人物たちのトラウマ
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グォ検事は過去に大きなトラウマを抱えていますが、連続殺人犯もトラウマに苦しんだ過去が判明していきます。記者のイェンジェンも、友人を殺害された過去がトラウマになっている一人です。
イェンジェンは友人を殺害されたつらい過去を、被害女性の名誉を守る特番を作りたいという熱意となり、トラウマがプラスに作用しています。
一方殺人犯はトラウマのせいで自分を否定し受け入れられなくなり、結果的に女性を傷つける行為へ走ってしまうことに。
登場人物のの抱えるトラウマを違った切り口で描き、トラウマがその人にどう作用するかも描いているように感じました。
ミステリーだけでなく人間のトラウマをえぐるように映し出す心理描写や、トラウマを抱えた人間の生きざまを描くヒューマン・ドラマというおもしろさも兼ね備えています。
メディアの持つ力
舞台は1990年代でまだネットやSNSの普及していない時代ですが、殺人犯ノウがテレビ局に自ら電話をかけ、マスコミや世論を挑発するメディアの力の恐ろしさを描いています。
当時がこの状態なら、ネットやSNSが当たり前の時代に同じようなことが起こったらどうなるのか?と考えただけで恐ろしくなるはず。
メディアが持つ力とその影響力と恐ろしさは、模倣犯がはびこることになる後半からも見て取れます。
インフルエンサーが登場し、SNSでの誹謗中傷が当たり前となった時代だからこそ、メディアの持つ影響力の恐ろしさについて改めて考えたくなります。
『模倣犯』のネット上での評判は?
Netflix 模倣犯を観了。
宮部みゆき原作の台湾リメイク。
これかなり良かったです。
目を背けたくなるような凄惨な描写も多数ありますが費やした時間を後悔させない出来。台湾ドラマ良いね👍
[若干ネタバレですが最後に犯人が爆発したりしません。よろしくお願いします。]https://t.co/Zc1pQ9d04V— ぼんくら犬🇯🇵StandWithUkraina (@bonkuraken) April 9, 2023
模仿犯 すごく良かった
映像的にショッキングな描写が多いけど日本の映画とドラマより台湾版の方が好き
ただロマンチックな場面になると台湾歌謡が流れるところは日本の昔のドラマのようhttps://t.co/1wBh0dSHgh— ファズモトフィロユキ®︎ (@hanorocks) April 11, 2023
『模倣犯』まとめ
いろいろと惜しい点はありますが、総合的には見応えのあるサイコ・サスペンスに仕上がっています。原作を読んでも読んでいなくても楽しめるので、Netflixに加入されている方はぜひチェックしてみてください。