福島第一原子力発電所の事故を題材にしたNetflixオリジナル・シリーズ。あの日何が起こったのか…?現場にいた人達の目線で描かれる実話を基にした物語は、一見の価値ありです。本作のあらすじ・キャスト・感想・見どころなどを、ネタバレあり&なしでレビューします。
『THE DAYS』概要
配信日:2023年6月1日
ジャンル:ヒューマン・ドラマ、実録
製作国:日本
監督:西浦正記、中田秀夫
話数:全8話、1話約60分
『THE DAYS』あらすじ(ネタバレなし)
2011年3月11日、東日本大震災が起き福島第一原子力発電所が津波で襲われ、波にのまれた4基の原子炉は冷却機能を失い暴走を始めてしまう。
全電源を喪失したため原子炉のモニターができず、現場の作業員たちは対応に追われる。
所長の吉田が指揮を取り原子炉を冷却するための対策に講じるが、余震が続き瓦礫が散乱し放射能にさらされた現場では思ったように作業が進まない。
事故の詳細を知りたがる日本政府の圧力もあり、現場は混乱を極めてしまう。メルトダウンだけは避けなくてはならないが、冷却機能を失った原子炉の核燃料が解けはじる。
1,2号機の当直長の前島は作業員と共に冷却機能挽回の対応に当たり、自衛隊も原発に到着し協力する。
あらゆる策を講じたが思ったような成果が上がらず、吉田所長はメルトダウンの可能性を考慮して作業員たちを退避させる…。
『THE DAYS』感想&評価(ネタバレなし)
IMDb:8.5(10点中)
おすすめ度:★★★★☆
ストーリー:★★★☆☆
エンタメ性:★★★☆☆
感動:★★★☆☆
普段国内ドラマはほとんど観ない筆者ですが、本作は本当に観てよかったと思いました。何が起きたのか事実をニュースで見聞きして知っていると思っていたのは、とんだ間違いだったというのを痛切に感じた作品です。
映画『FUKUSIMA50』を前に視聴していたので、ドラマで描かれている事実は映画で描かれていたのとほぼ同じ。
それでも2時間の映画と全8話のドラマでは詳細の描き方に差があり、本作の方が福島第一原発で起こった事実を詳しく知ることができます。
地震や津波のシーンは本当に恐ろしかったし、原子炉の電源が落ちてからの緊迫感が半端ありませんでした。常に鳥肌が立つような緊張感を感じ、あの現場にいた人たちの恐怖は計り知れなかったと思います。
実録ドラマ的な構成なので、人間ドラマの部分は弱いものの役所広司をはじめ出演者の迫真の演技が本当に素晴らしかったです。
原発事故に対応した人たちの美談で終わらず、あの時何が起こったかをリアルに詳細に描いていて、今後の問題提起的なエンディングの締め方もよかったです。
福島第一原発事故の真実を知りたい方は、必見のドラマでおすすめです!
『THE DAYS』キャスト
吉田(役所広司)
福島第一原発所長。暴走する原子炉を止めるため、あらゆる策を講じる。
木下(音尾琢真)
福島第一原発5号機の副所長。吉田の右腕的存在で、チームを引っ張っていく。
前島(竹野内豊)
1,2号機の当直長。原子炉を冷却するため、部下達と一丸となって作業に当たる。
古谷(小林薫)
1,2号機の運転員。当日は休日だったが、原発の危機を知って駆け付ける。
大杉(六平政直)
1,2号機の運転員。年配のため危ない作業は将来のある若者に任せられないと、自ら危険な任務に志願する。
東内閣総理大臣(小日向文世)
内閣総理大臣。福島第一原発の危機的状況に対応していく。
村上(光石研)
東京中央電力副社長。吉田所長と常に連絡を取り合い、原子炉の暴走を止めるため奔走する。
『THE DAYS』全あらすじ・ラスト結末(ネタバレあり)
2011年3月11日、東日本大震災が起き福島第一原子力発電所が津波で襲われ、波にのまれた4基の原子炉は冷却機能を失い暴走を始めてしまう。全電源を喪失したため原子炉のモニターができず、現場の作業員たちは対応に追われる。4号機の地下を確認しに行った作業員2名が、津波に襲われ犠牲になってしまう。所長の吉田が指揮を取り原子炉を冷却するための対策に講じるが、現場は混乱を極める。
電源車が現場に到着するがケーブルを手作業で行わねばならず、余震が続き瓦礫が散乱し放射能にさらされた現場では思ったように作業が進まない。事故の詳細を知りたがる日本政府の圧力が強く、東総理が原発の詳細を知るため福島を訪れる。冷却機能を失った原子炉の核燃料が解けはじめ一刻を争うなか、吉田社長はガスを放出させるベントを行うと決める。
電源喪失のためベントをするには弁を手動で開けねばならず、1,2号機の当直長の前島はベントを行う作業員を人選する。第1班は弁を開けるのに成功するが、第2班はメーターが振り切れるほどの放射線量のため弁に近づけない。若い作業員たちは中央制御室から退避したいと申し出るが、前島は今自分たちが退避したら福島を見捨てることになると言いみんなに残るよう説得する。1号機から煙が出ていると連絡があり、コンプレッサーがうまく作動し水蒸気が抜けたことで圧力が下がり、ベントは成功した。
一同が胸をなでおろすのも束の間、ものすごい爆発音がして制御室の屋根が崩れ現場は混乱する。原子炉の建屋の5階部分が吹っ飛んだことが分かり、多くのケガ人が出る。原子炉の爆発ではなく水蒸気爆発だと分かるが、10時間かけて電源車から敷いたホースはズタズタになってしまう。爆発のせいでベントで下がった圧力が、再び上がり始める。真水が残り少なくなり海水を注入することを吉田は提案するが、再臨界や廃炉の問題もあり政府から承認が出ない。
吉田は副社長の命令を無視して海水注入を独断で開始し、その後政府から海水を注入せよと命令が下る。水蒸気爆発で弁が閉じてしまったため、海水を注入するも水位が上がらない。3号機が爆発し2度の爆発で現場の士気が下がり、行方不明者は40名に上った。行方不明になっていた二人の遺体が、4号機の地下で発見される。今度は4号機の温度が上昇し、2号機の核燃料が全て露出しメルトダウンが現実目前となってしまう。吉田は作業員たちを避難させ、残った社員たちは家族に遺書を書いた。
万策尽きて吉田は原発で死ぬことを覚悟するが、副社長が建設に使う高層階にコンクリートを流し込むポンプ車を海水注入に使えないかと提案する。自衛隊がヘリコプターから海水を上空からまき、ポンプ車を使った海水注入も上手くいく。何とか原子炉の暴走は止められたが、原子炉を制御できた直接的な原因は不明のままだった。2023年の現在になっても原発事故は収束しておらず、廃炉作業は今も続いている。
『THE DAYS』見どころ・解説・考察(ネタバレあり)
福島第一原発で起こった真実
本作はジャーナリスト門田隆将の書籍『死の淵を見た男』と、『吉田調書』『福島原子力事故調査報告書』を基に製作されています。
制御できなくなった原子炉のメルトダウンを防ぐために、戦う現場の人達の姿をリアルに描いていて心から感銘を受けました。
ひとつ解決したと思ったら、問題が起きてまた最初からやり直しという、一歩前進しては五歩後退するような状況が続くことに。
ニュースで見聞きして大体のことは分かってると思っていた自分を反省してしまい、福島第一原発で起こった真実が詳しく分かるドラマになっています。
最後に日本が原発を持つことになった歴史や、未来を担うはずだった原発が負の遺産になったことが描かれています。
人々に豊かな暮らしをもたらす原発ですが、何かあった時は他とは比べ物にならないほど恐ろしい結果をもたらすということを改めて思い知らされたように感じました。
前例のない原発事故
福島第一原発の事故で致命傷となったのが、津波による被害です。地震が起きた後はまだ電源喪失しておらず、普通に対処できるレベルでしたが津波で全電源を失ってからは制御できない状態に…。
チェルノブイリやスリーマイル原発でも電源は喪失せず、原子炉をモニターする計器は全て生きている状態でした。原子炉の状態を全くモニターできないという前例のない前代未聞の状態で、マニュアルもなくまさに手探りの状態で対処していくことになります。
吉田所長が決断したベントや海水注入も前例がなく、まさに福島第一原発の事故は前代未聞の大惨事だったわけです。その状態からメルトダウンを免れたのは、まさに奇跡と呼べるのかもしれません。
福島第一原発の事故が、これから世界のどこかで起きるかもしれない原発事故を防ぐ、あるいは起きた後の対処に役立つ前例となることを祈るばかりです。
現場と政府の温度差
本作では原発で対処に追われる吉田所長をはじめとする原発の作業員や自衛隊員、東京で情報を待ち指示する人間の二つの現場が描かれます。
前例のない事故で混乱するなか手探りで作業に当たる現場社員と、体裁を気にして後手に回る政府側の温度差が本当に大きい。
吉田所長が首相や副社長のオンラインでのミーティングで、ズボンを下ろすシーンが登場しますが『FUKUSIMA50』でも同じシーンがありました。
このシーンは現場の大変さと苦労を知らない、政府の人間に対する所長の怒りを見事に表していたと思います。もうクソったれ!みたいな気持ちだったんでしょう。
命をかけて戦う現場の人たちと、責任のなすり合いで自分の管轄ではないと逃げ回る政府の人達の差が大き過ぎました。
こういった危機的状況こそ、自分がどう行動できるかという、人間力の高さが問われるのかもしれないと感じます。
メルトダウンが起きた時
最終話では学者によるメルトダウンが起こったときのシュミレーションが登場し、東京、千葉、神奈川など5000万人が家を失い、数十年人が住めなくなり首都が機能しなくなると説明されます。
それを聞いていた総理は顔面蒼白で、言葉もありません。もしかしたら本当に起きていたかもしれない出来事だったと考えると、心底恐ろしくなります。
まさに3月11日は日本滅亡の危機だったとも言え、改めて被害を最小限に食い止めた現場の人達の勇気と努力に感謝せずにいられません。
『THE DAYS』のネット上での評判は?
Netflixで配信開始した『THE DAYS』
まだ三話ほどの鑑賞ですが、HBOの『チェルノブイリ』にも負けない凄い作品です。
吉田所長の葛藤や決断については多くが語られているけど、その日たまたま当番だった井沢当直長(劇中では前島)や運転員の方々の決死の覚悟に胸が詰まる。
pic.twitter.com/rvE0LrnYSx— ひ孫正義 (@yoshiQ1) June 2, 2023
Netflix『#THEDAYS』第1話鑑賞。福島第一原発事故の7日間を描くドラマ。地震や津波のシーンのリアリティに震える。あの日、あのときにいったい何が起こっていたのかというストーリーはやっぱり気になるので、明後日配信開始したら残りの7話分もしっかり見たい。@FansVoiceJP pic.twitter.com/ykYHBwIIfh
— A n d y✈ (@andyoume) May 30, 2023
『THE DAYS』まとめ
福島第一原発で何が起こったのかという事実がよくわかるドラマで、すごく見応えがありました。俳優陣の演技も素晴らしく、ぜひ多くの方に観てほしいドラマです。Netflixに加入されている方は、ぜひチェックしてみてください♪