アメリカのオピオイド問題にメスを入れた、実話に着想を得たドラマ。パーデュー製薬が金儲けのために、危険な鎮痛剤オキシコンチンを全米に浸透させていく様が恐ろしい!本作のあらすじ・キャスト・感想などを、ネタバレあり&なしで早速チェック!
『ペインキラー』概要
配信日:2023年8月10日
ジャンル:実録、ヒューマン・ドラマ
製作国:アメリカ
原作・制作:マイカ・フィッツァーマン=ブルー、ノア・ハーブスター
監督:ピーター・バーグ
話数:全6話、1話約50分
日本語吹き替え:なし
『ペインキラー』あらすじ(ネタバレなし)
パーデュー製薬のアーサー・サックラーは製薬会社のビジネスモデルを築いて成功するが、一族の名前を残すため美術品に投資して多額の負債を抱えてしまう。
後を継いだ甥のリチャード・サックラーは、負債を埋めるため鎮痛剤に注目し中毒性の高いオキシコンチンを販売する。
エディ・フラワーズは連邦検事局の捜査官で、鎮痛剤のオキシコンチンにより多数の人が依存症となっている事実を調査していた。
パーデュー製薬は大卒で容姿端麗な営業員を育成し、オキシコンチンを全米に広めていく。エディは事の深刻さを上司に訴え、パーデュー製薬と闘うことを決める。
『ペインキラー』感想&評価(ネタバレなし)
IMDb:7.0(10点中)
おすすめ度:★★★★☆
ストーリー:★★★☆☆
エンタメ性:★★★☆☆
感動:★★★☆☆
有名なオピオイド問題を扱った実話に着想を得たドラマで、ドラマ内に登場するパーデュー製薬やリチャード・サックラーも実在します。
マイケル・キートン主演の『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』も、パーデュー製薬によるオキシコンチンの汚染について描いたドラマで、内容的には『ペインキラー』とほぼ同じ。
実際に起きた部分は同じながら『ペインキラー』と『DOPESICK 』は、個人の物語や作風が異なっています。
個人的には『DOPESICK 』の方が見応えがあり、マイケル・キートンの演技が本当に素晴らしくクオリティは絶対に上だと断言!それでも『ペインキラー』は全6話と短く、テンポがいいので見やすい仕上がりだと感じました。
痛みを消すはずの鎮痛剤が新たに人々の痛みを生み出すという、皮肉な結果になってしまうのが悲痛過ぎます…。
麻薬の売人や悪人が犠牲になるのではなく、普通の善良な人々が処方された薬によって人生を滅ぼされていく過程に怒りを覚えずにいられません。
アメリカのオピオイド問題にメスを入れた見応えのある作品に仕上りで、実録系ドラマが好きな方にもおすすめです。
『ペインキラー』キャスト
リチャード・サックラー(マシュー・ブロデリック)
パーデュー製薬の社長。叔父のアーサーが残した負債を埋めるため、新薬の鎮痛剤オキシコンチンを販売し、中毒性があると知りながら全米に広めていく。
エディ・フラワーズ(ウゾ·アドゥバ)
連邦検事局の捜査官。オキシコンチン絡みの事件に注目し、オキシコンチンが人々を蝕んでいくのを止めようと行動を起こす。
グレン・クライガー(テイラー・キッチュ)
自動車修理工場の経営者。背中の負傷により鎮痛剤が必要となり、オキシコンチンを処方され鎮痛剤の依存症になっていく。
シャノン・シェーファー(ウェスト・ドゥカヴニー)
パーデュー製薬の営業員。金儲けに目がくらみオキシコンチンを宣伝していくが、中毒性の高さに気付いていく。
ブリット・ハフォード(ディナ・シハビ)
パーデュー製薬の営業員。シャノンを営業員として育成していき、成功へと導いていく先輩。
アーサー・サックラー(クラーク・グレッグ)
リチャードの叔父。パーデュー製薬の名を残すため、美術品に投資して巨額の負債を残す。製薬会社のビジネスモデルを築いた人物。
リリー・クライガー(カロライナ・バルトチャク )
グレンの妻。夫がオキシコンチンに依存していく姿を見て心配する。
タイラー・クライガー(ジャック·ミュラーン)
グレンの義理の息子。グレンの仕事を手伝っている最中に怪我をさせてしまい、責任を感じる。
『ペインキラー』全あらすじ・ラスト解説(ネタバレあり)
パーデュー製薬のアーサー・サックラーは製薬会社のビジネスモデルを築くが、一族の名前を残すため美術品に投資して多額の負債を抱えてしまう。後を継いだ甥のリチャード・サックラーは、負債を埋めるため中毒性の高いオピオイド系鎮痛剤に注目し、オキシコンチンを販売し全米に広めていく。オキシコンチンの原料はコカインやヘロインと同じで、ヘロインの錠剤を患者に処方しているのとまるで変わらない状態だった。
エディ・フラワーズは連邦検事局の捜査官で、鎮痛剤のオキシコンチンにより多数の人が依存症となっている事実を調査している。エディは診療報酬の不正を暴くのが仕事で、1998年にX線装置の不正請求を調べたことから、ある診療所での膨大なオキシコンチンの処方箋数に気付く。グレン・クライガーは自動車修理工場を営んでいるが、仕事中の事故で背中を負傷し鎮痛剤が手放せなくなる。医師にオキシコンチンを処方されるが、次第に依存してしまう。
オキシコンチンは鎮痛剤としての効果はあるが依存性が高く、オキシコンチン欲しさに強盗を働く者も多く、ドラッグと同じように吸引してハイになる人も現れるようになる。グレンは深刻な依存症となりレストランで倒れて病院に運ばれ、薬物依存症と診断されリハビリを開始する。エディはオキシコンチンが急速に広まっているのは、容姿端麗な営業員たちによる販売方法に問題があると判断し営業員に目を付ける。営業員のシャノンは成功を夢見てオキシコンチンの営業員となり、先輩のブリットに教えられ成功を手に入れていく。
オキシコンチンの中毒者が増えていき、シャノンはその中毒性の高さを危惧するようになる。エディは上司のジョン・ブラントリー検事とパーデュー製薬を告発することを決め、パーデュー製薬が議会に呼ばれる。オキシコンチンの中毒性が問題となりはじめ、パーデュー製薬のなかで内輪もめが起きる。パーデュー製薬はオキシコンチンの乱用者がいる事実を把握していなかったと主張するが、エディはパーデュー製薬のデボラ・マーロウからリチャード達が乱用者の事実を把握していた事実を掴む。
シャノンもエディに協力し、証拠としてメールや電話の記録を提出した。グレンは何度もリハビリをしたがオキシコンチンを絶つことができず、車の中で死亡しているのが見つかった。パーデュー製薬の重役3人は軽犯罪のみで裁かれ、2019年の集団訴訟でパーデュー製薬は破産を申請した。サックラー家は誰一人起訴されておらず、正義はなされないままである。
『ペインキラー』見どころ・解説・考察(ネタバレあり)
製薬会社の闇
In Painkiller, Matthew Broderick plays three incarnations of Purdue Pharma exec Richard Sackler over a span of almost 30 years!
Read our previously conducted interview with the actor here:https://t.co/upSeoS4UNP
— Netflix Tudum (@NetflixTudum) August 10, 2023
パーデュー製薬がオキシコンチンを販売し、どうやって全米に浸透させていったのかが詳しく描かれています。
事の発端は前社長のアーサー・サックラーが残した多額の負債で、アーサーは製薬会社のビジネスモデルを築きましたが、一族の名前を残したいがために美術品に投資して多額の借金を作ってしまいます。
後を継いだ甥のリチャードはその負債を埋めるため、人々を魅了する新薬が必要と考え鎮痛剤に目を付けます。コデインやモルヒネといった死につながるイメージのない、オキシコドンに注目し新しい鎮痛剤のオキシコンチンを販売。
オキシコンチンが作られたいきさつは負債を埋めるためで、結局は金儲け主義。売りやすく人々に信頼されやすい鎮痛剤を、大卒の容姿端麗な営業員を育成して全米に広めていきます。
新薬で金儲けする製薬会社、薬を売りまくって贅沢を楽しむ営業員、オキシコンチンの処方で潤う診療所という金儲け主義の図式ができあがることに…。危険な薬が瞬く間に広がっていく過程が恐ろしく、製薬会社の闇にがっつりとメスを入れています。
オキシコンチンの恐ろしさ
Netflix’s #Painkiller tracks the opioid crisis from its greed-driven origins in an entertaining and enlightening six episodes; @shaneryanhere reviews: https://t.co/g9Lauck1bi
— Paste Magazine (@PasteMagazine) August 10, 2023
リチャードは効き目があり持続性の長いオキシコンチンを販売しますが、元になっているのはヘロインやコカインと同じ原料です。
言ってみればヘロインの周りにコーティングだけ施した錠剤を合法に処方するようなもので、ヘロインの錠剤版と言っても何ら変わりはありません。
中毒性の高さを知りながら販売して広めていき、中毒者が増えると乱用する者が悪いと言って言い逃れするのだからその無神経さに呆れてしまいます。
何も知らない庶民たちは処方された薬だからと安心して服用しますが、それが取り返しのつかない事態へと繋がっていくことに。
各エピソードの冒頭で実際にオキシコンチンによって家族を失った人たちが登場し、オピオイドの恐ろしさを物語っています。
オキシコンチンを広める営業員
『ペインキラー』はパーデュー製薬と彼らを追う検事捜査官のエディ、依存症になっていく自動車修理工場の経営者グレンとその家族、パーデュー製薬の営業員の物語がメインの軸となって進みます。
鎮痛剤を売ることでお金を儲け、成功への階段を上っていくシャノンの物語が印象的。会社から教わったオキシコンチンの効き目を信じて診療所で勧めていきますが、セクハラにあったり嫌な思いをしたりと成功に伴う痛みも味わうことに…。
それでも順調に売り上げを伸ばしていきますが、オキシコンチンの中毒性を知り、自分が売っている薬が人々の命を奪っていると知ることになります。
エディに言わせれば、営業員のやっていることはドラッグディーラーと同じです。全米にオキシコンチンが広まる様子と蝕まれていく過程が、営業員のシャノンの目を通して描かれているのが興味深い。
シャノン・シェーファーを演じているのは、『Xファイル』で知られるデヴィッド ·ドゥカヴニーの娘のウェスト・ドゥカヴニー。親の七光と言わせない演技力で、シャノン役を見事に演じ切っています。
『ペインキラー』VS『DOPESICK』
『ペインキラー』はDisney+で配信中のマイケル・キートン主演の『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』と内容的にはほぼ同じ。
どちらもパーデュー製薬によるオキシコンチンによる汚染と製薬会社の闇にメスを入れた作品になっています。
『ペインキラー』はテンポのいい見やすい構成に対し、『DOPESICK』は見応えのある重厚なドラマに仕上がっています。どちらもおもしろいですが、作品のクオリティの高さは絶対に『DOPESICK』の方が上だと断言!
オキシコンチンに依存していく医師を演じたマイケル・キートンと、リチャード・サックラーを演じたマイケル・スタールバーグの圧倒的な演技は一見の価値あり。
どちらも営業員や依存していく人々の物語を描いているのは共通しており、『ペインキラー』では検事局捜査官、『DOPESICK』ではDEA捜査官が活躍する設定になっています。
どちらかを選べと言われれば『DOPESICK』に軍杯が上がりますが、違うアプローチの作風なので見比べてみるとおもしろいかもしれません。
『ペインキラー』のネット上での評判は?
10日に配信が始まったNetflixリミテッドシリーズ『ペイン・キラー』開封
米国を揺るがす鎮痛剤オピオイド問題は、どのように始まり、社会に広がっていったのか…。
効果的な演出、惹き込まれる演技、躍動感溢れる魅力的なフォーマットで描かれている。ストーリー性のあるサウンドトラックも👌 pic.twitter.com/KxpdGEQwuq
— 𝓓𝓳𝓪𝓷𝓰𝓸🌙 (@Django_88films) August 10, 2023
まぁ、本当に上手に描かれたドラマだと思います。製薬会社の鎮痛系お薬(麻薬)の成り方。頷くしかできない。日本でも処方されているけど処方箋には「麻薬」と書かれています。このドラマの良いところは、サントラにもあり。
「ペイン・キラー」https://t.co/8ZYZNsZmrl
— Dr. Madam elly 👄 (@madamellydesu) August 10, 2023
『ペインキラー』のネット上での評判は?
先に『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』を視聴していたので、つい比べて観てしまいましたが、テンポがよくて観やすい仕上がりだったと思います。
オキシコンチンに蝕まれていく人々と家族の痛みが伝わる内容で、金儲け主義の製薬会社の闇について知ることができます。
実話に着想を得たドラマが好きな方におすすめで、Netflixに加入されている方はぜひチェックしてみてください♪