映画『6才のボクが、大人になるまで。』は、少年の成長の軌跡を12年間追ったハリウッド映画のなかでも稀な作品。本作のあらすじ・キャスト・見どころなど、この映画の魅力について紹介したいと思います!
『6才のボクが、大人になるまで。』のあらすじ
両親の離婚後、メイソンは母親のオリヴィアと姉のサマンサと3人暮らし。父親はアラスカでバンドの曲作りをしていて、しばらく会っていません。オリヴィアが大学で勉強しなおすために3人はテキサスに引っ越し、オリヴィアは大学で出会った講師と再婚します。
父親もアラスカから戻ってきて、前より頻繁に子供達と会うように。結婚離婚を繰り返す母親の都合で何度も引っ越しを余儀なくされたり、義父との関係が上手くいかなかったりと子供達は親に振り回されてしまいます。メイソンとサマンサは思春期に差し掛かり、メイソンは高校卒業後の将来の進路について考えることになります。
『6才のボクが、大人になるまで。』の見どころ
『6才のボクが、大人になるまで。』は2014年公開の、リチャード・リンクレイター監督の映画。主人公メイソンの6歳~18歳までの成長を、同じ俳優を断続的に撮影しながら制作した作品です。映画では普通子供時代は子役が演じますが、この映画は主役のメイソンを含め主演キャスト全員を12年間撮影しているのでリアリティに溢れているのが魅力。
昔の面影を残しながらも子供ってこんなに顔が変わるんだなと驚いたり、大人のキャストが年を重ねていく姿も感傷深いものがあります。どこにでもいるありふれた家族の物語なのに、ここまで惹きつけられるのは12年という歳月をかけてキャストの成長を描写しているからに他なりません。
ふと誰の人生でも12年間の姿を追って映画にするとこんなに面白い話ができあがるのでは?、思わせてしまうきらめきがこの映画にはあります。まるでドキュメンタリーのような感覚で観れて、2時間45分の長さを全く感じさせない傑作と呼ぶにふさわしい珠玉の映画。
家族の成長物語
メイソンの6歳~18歳までの成長物語であると同時に、父親のメイソン・シニアと母親のオリヴィアの成長物語でもあります。メイソンが小さい頃は音楽作りを理由にふらふらしていた感じの父親も、時が経つにつれて定職について再婚し落ち着いた大人になっていきます。
オリヴィアは結婚相手に恵まれず結婚離婚を繰り返すも、大学で博士号を得て大学で教えながら子供達をしっかりと責任を持って育て上げます。
メイソン・シニアとオリヴィアの関係も最初はぎくしゃくしていますが、お互い再婚した後も子供達を愛情深く育てていくいい関係へと変化していくのも見どころ。二人はまるで離婚した夫婦の理想像のようで、大人達の成長と家族の絆を見られるのもこの映画の醍醐味のひとつです。
監督はリチャード・リンクレイター
12年間かけて映画を作り上げるという壮大な企画を実現したのは、監督のリチャード・リンクレイター。12年間で1本の映画を撮るということは、出演者や自分に何かあったらこの企画自体が駄目になってしまう相当リスクの高い仕事です。それを成し遂げた監督の熱意と力量に脱帽!
リチャード・リンクエイターは、1988年の監督作『 スラッカー 』がサンダンスで脚光を浴びました。その後イーサン・ホーク主演の『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』で、ベルリン国際映画祭監督賞を受賞。『6才のボクが、大人になるまで。』で、ゴールデングローブ賞の監督賞を受賞しています。
『6才のボクが、大人になるまで。』のキャスト
メイソン・エヴァンス・ジュニア(エラー・コルトレーン)
6歳~18歳までのメイソンを演じたのは、テキサス州オースティン出身のエラー・コルトレーン。当時7歳だったエラーはオーディションでリンクレイター監督に見いだされ、12年間に渡って見事にメイソン役を演じました。
この映画が成功したのは、エラー・コルトレーンの功績と言っても過言ではありません。6歳の男の子がさまざまな葛藤を抱えながらも、大人になっていく過程を見事に演じ切っています。2006年のリンクレイター監督の『ファーストフード・ネイション』にも出演しています。
メイソン・エヴァンス・シニア( イーサン・ホーク)
イーサン・ホークが離婚後も子供達のことを気にかけ、積極的に関わっていこうと努力する父親役を好演。実生活でも4児の父親である、イーサン・ホークの素の部分が垣間見えます。
最初はふらふらとしている印象ながらも、子供達の成長と共に地に足が付いたいい父親へと成長していく姿が印象的。子供達を愛し人生の節目にもしっかりと寄り添う父親役は、まさに当たり役で彼の代表作になったことは間違いありません。この演技で、アカデミー助演男優賞にノミネートされています。
オリヴィア・エヴァンス(パトリシア・アークエット)
結婚に失敗して子供達を振り回してしまうも、大学で勉強しなおして学位を取る努力家の母親をパトリシア・アークエットが熱演。人生につまずきながらも子供達へのブレない愛を貫き、立派に育て上げる強い母親がハマっていて彼女のリアリティのある演技が本当に素晴らしい!
メイソンが大学に行くために旅立つとき、子育てが一段落した安堵感と寂しさを吐露するシーンはもらい泣きする女性がたくさんいるはず。この演技で、アカデミー助演女優賞を受賞しました。
サマンサ・エヴァンス(ローレライ・リンクレイター)
その苗字からも分かる通り、監督のリチャード・リンクエイターの実娘。目元の辺りがリンクエイター監督によく似ていますよね。弟のメイソンをうざいと言いながらも、そっと見守る姉を好演。
2001年のリンクエイター監督作の『ウェイキング・ライフ』にも出演していて、その他に2017年の映画『Bomb City』や『Blood Surf』に出演しています。
ショーレースの受賞歴
『6才のボクが、大人になるまで。』は数々の映画賞にノミネートされ、多くの賞を受賞しています。主要な映画賞だけでも相当な数の賞を受賞していますが、トータルで24つの映画賞にノミネート&受賞しています。
主な受賞歴
第64回ベルリン国際映画祭 監督賞
ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞監督賞 助演女優賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞 監督賞 主演女優賞
ゴールデングローブ賞 作品賞 監督賞 助演女優賞
アカデミー賞 助演女優賞
『6才のボクが、大人になるまで。』の感想
上映時間が長いとか地味そうな映画、という印象を持たれがちですが、家族の普遍的な愛と絆を描いた傑作!12年間の家族の軌跡を追ったドキュメンタリータッチな映画で、キャストが年を重ねていく様子はリアリティがあって、他の映画とは一線を画す仕上がりになっています。絶対に観て損はない素晴らしい映画でおすすめです!